1-1 燃料デブリが溶けていた温度範囲を評価する

−(U, Pu, Zr)O2の融点に対するPuやZrの影響評価−

図1-4 (U0.5-yPuyZr0.5)O2の昇温時の温度変化の例

図1-4 (U0.5-yPuyZr0.5)O2の昇温時の温度変化の例

設定された一定の昇温速度で試料を昇温し、試料の融点に達すると融解潜熱のために昇温速度が遅くなります。この際の屈曲点を固相線温度と称します。また、融解潜熱がなくなると昇温速度は設定された速度に戻ります。この際の屈曲点を液相線温度と称します。

 

図1-5 模擬デブリ試料の固相線と液相線のZr含有率依存性

図1-5 模擬デブリ試料の固相線と液相線のZr含有率依存性

横軸をZr含有率として固相線温度,液相線温度をプロットした図です。Pu含有率の異なるどの試料についてもZr含有率が50〜75%の付近で最小値を示します。

 

図1-6 模擬デブリ試料の固相線と液相線のPu含有率依存性

図1-6 模擬デブリ試料の固相線と液相線のPu含有率依存性

横軸をPu含有率として固相線温度,液相線温度をプロットした図です。Pu含有率が10%以下の範囲に極大値を示す傾向が得られました。

 

[1] Lambertson, W. A., Mueller, M. H., J. Amer. Cer. Soc., vol.36, issue 11, 1953, p.365-368.
[2] Kato, M. et al., Mater. Res. Soc. Symp. Proc., vol.1444, 2012.

東京電力福島第一原子力発電所事故の廃炉措置対応として、損傷炉心からのデブリの取出しやその後の保管の検討が進められています。これらの検討には現在のデブリの状態を評価・予測する必要があり、そのためにはデブリの熱特性等をもとに理論的な根拠に基づいた事故シナリオからデブリの状態を予測する必要があります。また、3号炉にはプルサーマル燃料としてウラン(U)−プルトニウム(Pu)混合酸化物(MOX)燃料が装荷されていたことから、Puの影響を考慮する必要もあります。デブリの融点は事故シナリオを検討する上での重要な熱特性の一つであり、炉心底部に堆積した後もデブリの中心部分等は崩壊熱により溶融状態が長く継続されたと考えられることから、デブリの状態を予測する上でも重要な物性となります。

本試験では模擬デブリとしてPu含有率とジルコニウム(Zr)含有率の異なる(U, Pu, Zr)O試料を9種類調製しました。これらはタングステン製のカプセルに真空封入され、高周波誘導加熱炉によって加熱されます。試料の温度はカプセルの測温孔を介して放射温度計で測定されます。得られた熱曲線の例を図1-4に示します。これらの熱曲線の停滞部分を解析することによって、試料の融点を評価します(サーマルアレスト法)。また、本試料のように融点が1点にならない物質の場合、溶融開始温度を固相線温度,溶融終了温度を液相線温度といいます。

横軸をZr含有率とした場合の融点の比較を図1-5に示します。同じPu含有率の試料で比べると、Zr含有率が50〜75%の付近に融点の最小値があるという傾向を示しました。これはUO-ZrOの混合酸化物と同様の傾向であり、今回の試験範囲ではPu含有率によって融点は変化しますが、Zr含有率が50〜75%付近に融点の最小値があるという傾向は変わらないという結果を得ました。図1-6に横軸をPu含有率とした場合の融点の比較を示します。それぞれPu含有率が10%以下の範囲に極大値を持ち、10%から20%までは低下する傾向を示しました。Zrを含有しないMOX試料の融点はこの試験範囲ではPu含有率にしたがって単調に低下する傾向があり、Zrが含有することによって異なる傾向が示されることが分かりました。本研究成果は、廃炉措置対応の一環として進められている炉内状況の把握やシビアアクシデント研究等への貢献が期待されます。

本研究は、原子力機構が国際廃炉研究開発機構の組合員として実施した経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業「平成25年度発電用原子炉等廃炉・安全技術基盤整備事業(燃料デブリ性状把握・処置技術の開発)」の成果の一部を含みます。



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