6-2 より安全なプルトニウム燃焼高温ガス炉に向けて

−酸素ゲッターによる被覆燃料粒子の内圧破損の抑制−

図6-3 従来のUO2被覆燃料粒子と安全性を高めたプルトニウム燃焼高温ガス炉の被覆燃料粒子

図6-3 従来のUO2被覆燃料粒子と安全性を高めたプルトニウム燃焼高温ガス炉の被覆燃料粒子

燃料核の母材に化学的に不活性なイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia: YSZ) を用いて核拡散抵抗性を強化するとともに、従来の被覆層に加えてZrC層を酸素ゲッターとして被覆し、被覆燃料粒子(直径約1 mm)の内圧破損を抑制して安全性を強化します。

 

図6-4 プルトニウム燃焼高温ガス炉の概略図

図6-4 プルトニウム燃焼高温ガス炉の概略図

私たちが概念設計を行った高温ガス炉GTHTR300(熱出力600 MW,燃料領域の高さ8 m(1 m×8段),燃料領域外径5.5 m)をベースにして、プルトニウム燃料を装荷するとともに、燃料領域を炉心内側に拡張し臨界性を高めてより多くの核分裂性プルトニウムの削減を図ります。

 


高温ガス炉は、電源などが全て喪失しても、物理現象によって「止まる」「冷やす」「閉じ込める」を担保することができる極めて安全性の高い原子炉です。一方、プルトニウム(Pu)インベントリを減らす技術の確立は、国際社会及び我が国における核セキュリティ上重要です。私たちは、高温ガス炉でPuを燃焼して削減するシステムを提案してきました。

高温ガス炉の運転にあたり、従来の被覆燃料粒子の主な破損原因として、一酸化炭素(CO)ガス及び核分裂生成物ガスの生成による内圧上昇が挙げられます。このうちCOガスは、核分裂に伴い二酸化ウラン(UO2)や二酸化プルトニウム(PuO2)から遊離する酸素と低密度炭素層の炭素の反応により生成します。私たちは、図6-3に示すように炭化ジルコニウム(ZrC)を酸素ゲッターとして燃料核に被覆することで内圧破損を抑制し、従来の被覆燃料粒子を用いる場合に比べて安全性を強化したPu燃焼高温ガス炉を提案しています。

現在、Pu燃焼高温ガス炉の基盤技術の確立を目的として、東京大学,富士電機及び原子燃料工業と連携した研究を、2014年度から4年間の予定で実施しています。その中で、私たちは燃料設計、炉心核熱設計及びZrC被覆試験を主担当として実施しています。

これまでに、燃料設計については、ウラン燃料用に開発された内圧計算コードを、Pu燃料の内圧を計算できるように整備しました。今後、PuO2-YSZを燃料核とする被覆燃料粒子の内圧を、ZrC層による内圧抑制効果を考慮して評価する予定です。炉心核熱設計については、図6-4に示す炉心の燃焼計算を行うための入力を作成しました。今後、核計算コードSRAC/COREBNを用いた全炉心燃焼計算及び燃料温度計算を行う予定です。また、ZrC被覆試験については、既設の試験装置を点検整備した後、試運転を行って正常に動作することを確認しました。今後、模擬燃料核へのZrC被覆試験を実施してZrC層及びYSZ境界面の材料特性データ(厚さ,密度など)を取得し、ZrC被覆の最適な運転条件(被覆温度,ガス流量など)を検討する予定です。

本研究は、文部科学省からの受託研究「プルトニウム燃焼高温ガス炉を実現するセキュリティ強化型安全燃料開発」の成果の一部です。



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